大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

札幌家庭裁判所 昭和55年(家)729号 審判 1980年8月12日

申立人 小田文子

主文

別紙目録記載の関係各戸(除)籍につき、それぞれ次のとおり戸籍訂正することを許可する。

一  出生届出錯誤につき、別紙目録中(イ)の戸籍の同籍「文子(申立人。以下同じ。)」の戸籍記載中、母の氏名欄に「ヨネ」とあるを「高木ナヲミ」と、父母との続柄欄に「長女」とあるを「女」と、それぞれ訂正すること。

二  上記(イ)の戸籍の同籍「文子」の複本籍につき、別紙目録中(ハ)の戸籍の同籍「文子」の戸籍記載全部を消除すること。

三  上記各戸籍訂正に伴い、

(1)  上記(イ)の戸籍の同籍「文子」につき、その身分事項欄に別紙目録中(ニ)の戸籍の同籍「文子」の身分事項欄の婚姻事項の記載を移記して所要の除籍の記載をするとともに、右(ニ)の戸籍及び別紙目録中(ロ)の戸籍の各同籍「文子」の戸籍記載をいずれも全部消除し、

(2)  別紙目録中(ホ)の戸籍の同籍「義男」及び「文子」につき、右「義男」の身分事項欄の婚姻事項中「大山文子」と記載あるを「林文子」と、右「文子」の身分事項欄の婚姻事項中「磯谷郡○○○村字○○××番地大山利三郎戸籍」と記載あるを「小樽市○○町×丁目×番地林一雄戸籍」と、その母の氏名欄に「亡大山ナヲミ」と記載あるを「高木ナヲミ」と、それぞれ訂正し、かつ、右「文子」につき、その父の氏名欄に「林一雄」と記入すること。

理由

一  申立人から主文同旨の審判の申立があつたので、当裁判所は、申立人提出にかかる別紙目録記載の戸(除)籍の各謄本及び申立人に対する審問の結果並びに当裁判所調査官○○○○作成の調査報告書を総合して必要な事実の調査をしたところ、

(1)  申立人は、昭和六年九月一四日小樽市において、別紙目録中(イ)の戸籍の戸主「林一雄」と同目録中(ハ)の戸主高木誠一戸籍の同籍(妹)「ナヲミ」との間の非嫡の子として出生したものであつて、右出生後一〇年余の間、上記父母のいずれからも出生届がないまま無籍の状態にあつたところ、昭和一一年五月二三日上記母「ナヲミ」から父の知れない私生子として、次いで、昭和一三年三月二九日上記父「林一雄」からその妻ヨネとの間の嫡出子として、各別の手続により出生届出がなされたことから、申立人が上記(イ)及び(ハ)の戸籍にそれぞれ入籍して同籍登載され、これにより複本籍を生ずるに至つた事情にあること。

(2)  しかして、申立人のその後の身分変動については、これが専ら、上記(ハ)の戸籍記載に基づいてなされているもので、昭和一一年五月二五日上記母「ナヲミ」が上記目録中(ニ)の戸籍の戸主大山利三郎と婚姻してその戸籍に入籍するに際し、申立人も母に随従入籍して同戸籍に登載された後、申立人は、昭和二九年一〇月四日現夫小田義男と夫の氏を称する婚姻をし、上記目録中(ホ)の戸籍に入籍して上記(ニ)の戸籍から除籍され現在に至つているが、一方、上記(イ)の戸籍には、右婚姻後も依然として同籍(長女)のままとなつていて、その改製後の戸籍である上記目録中(ロ)の戸籍上、なお未婚の子として同籍登載されたままであること。

がそれぞれ認められる。

二  従つて、これが関係各戸籍の整序方法としては、本来、申立人の母「ナヲミ」からの私生子出生届によつて先に入籍記載がなされた上記(ハ)の申立人の戸籍記載を正当な記載とし、その後に父「林一雄」からの誤れる嫡出子出生届によつて入籍記載がなされた上記(イ)及びその改製戸籍たる(ロ)の戸籍の各申立人の同籍記載をいずれも複本籍として消除するのが道理ではあるが、本件は、旧戸籍法施行当時、申立人の真実の父である「林一雄」がその父たるの資格において、非嫡の子を嫡出の子として出生届出した錯誤に起因する戸籍記載の是正をも要する事案であつて、右父による出生届は、先例上これが庶子出生届に転換され、旧戸籍法第八三条によりその届出にかかる子である申立人に対する認知の効力が生じているものと認むべきところ、申立人の血族の範囲を明らかならしめる上で右の父子関係の存在を戸籍上明示する必要があるから、結局、本件事案にあつては、便宜、上記(イ)の戸籍の申立人の戸籍記載につき、これを父からの庶子出生届に基づく記載の結果と適合する限度でそれぞれ所要の訂正をしたうえ、その複本籍として上記(ハ)の戸籍の申立人の戸籍記載を消除する方法により、かつ、これに伴う申立人の爾余の戸籍の消除若しくはその婚姻に基づく関連戸籍の所要の訂正等必要な戸籍の整序訂正をするのが相当である。

三  よつて、本件申立はその理由があるから、戸籍法第一一三条により、主文のとおり審判する。

(家事審判官 和田丈夫)

別紙

目録

(イ) 本籍(改製原戸籍)北海道小樽市○○町×丁目×番地

戸主 林一雄 同籍 (長女)文子

(更正前の表示、北海道「小樽區」○○町×丁目×番地。昭和三二年法務省令第二七号により昭和三三年五月一日改製、昭和三六年一〇月一六日あらたに戸籍を編製したため消除。)

(ロ) 本籍北海道小樽市○○×丁目×番地

筆頭者 林一雄 同籍(長女)文子

(更正前の表示、同市「○○町×丁目×番地」。昭和三二年法務省令第二七号により昭和三三年五月一日に改製につき昭和三六年一〇月一六日編製。)

(ハ) 除籍 愛媛県越智郡○○村大字○×××番地

戸主 高木誠一 同籍(姪)文子

(昭和一四年一月三一日「北海道札幌市○○○×丁目×番地」に転籍届出、同年二月六日全戸除籍。)

(ニ) 本籍(改製原戸籍)北海道磯谷郡○○町○○××番地

戸主 大山利三郎 同籍(妻ナヲミ私生子・女)文子

(編製時の表示、同郡「○○○村○○○○番外地」を、昭和一六年四月一日同郡○○○村「字○○××番地」と記載後、昭和二九年一二月二〇日同郡「○○町」○○××番地と更正。昭和三二年法務省令第二七号により昭和三三年四月一日改製、昭和三六年五月一九日あらたに戸籍を編製したため消除。)

(ホ) 本籍北海道厚田郡○○村大字○○村××番地

筆頭者 小田義男 同籍(妻)文子

(婚姻届出により昭和二九年一〇月四日編製。昭和四五年二月九日再製。)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例